『落語の影響を受けた太宰治短篇集』の魅力に迫る!

『落語の影響を受けた太宰治短篇集』 太宰治・著/宋知恩・絵 ISBN978-4-9904288-3-9
1,785円/B6/184ページ(一部フルカラー)/12月10日発売!
太宰治と落語……。まったく関係ないように思えます。しかし、太宰の親友でもあった作家の檀一雄は、早くから太宰文学の落語の影響を指摘していました。そして、開高健もそれに気づいていました。記憶に新しいのは、文芸評論家の三浦雅士氏の著書『青春の終焉』での、氏による「太宰治は落語家である」という明言。
本書は、落語の影響を受けたと思われる短篇4作を収録。ラインナップは、
・女生徒 ・駈込み訴え ・ロマネスク ・春の盗賊
「え? 何の脈絡もない?」
いえいえ、そう決め付けるのは、早いです。その秘密は、本書を!
さて、本書の魅力はこれだけではありません。
現在、落語は人気が定着しましたが、その第一線で活躍している柳家三三さんのインタビューを収録。10ページ以上も! しかも、インタビューされた場所は、あの「風紋」。
「え? どこ?」
太宰ファンであれば知らないのは、まずいですよ。
太宰の短篇「メリイクリスマス」の「シヅエ子」のモデルとなった林聖子さんが経営している文壇バーです。今回は、そこをお借りしてインタビューしました。もちろん、お店の紹介も掲載しています。
さらにさらに、本書は、弊社事業の1つ、「出版体験学習」の対象書籍です。今回は、東京藝術大学の在学生の方々にも参加していただきました。
そして、表紙カバーと挿絵などを担当してくれたのは、東京藝術大学大学院在籍の韓国の新進気鋭のアーティスト・宋知恩さん。2009年の院展に初入選するなど、活躍の場を韓国だけでなく、日本にも広げつつあります。その彼女のインタビューも掲載。「女生徒」について、おもしろい考察をしています。
柳家三三さんインタビューをチョット紹介!

Q 太宰治は落語の影響を受けていたといわれます。落語の登場人物を噺家がアレンジして演じる、というなかで、太宰も昔話などを独自にアレンジしてきました。三三さんにとって、太宰を含め文学の体験はどういうものでしょうか。
初めて読んだのは、「走れメロス」。小学生のときに、学芸会で「走れメロス」をやったんです。台本とは別に、あとで本で読んでみたら、結構、カラっとしていて、意外でした。
その後、噺家になりたての頃、ある先輩に、太宰治の『お伽草紙』という短篇集を読め、と言われたことがありました。古典落語でタヌキが主役の話があるのですが、『お伽草紙』の「カチカチ山」というのがあるから、参考になるぞ、ということでした。
落語には、普遍性があります。方法論の一つとして、誰しもが抱く弱さや不可思議さ、おもしろさがあるからこそ、独自のアレンジや変奏ができるわけです。噺の外枠だけを捉えるのではなく、噺の中に隠れている普遍的なテーマ――あまり好きな言い方ではありませんが、便宜上そう言います――を見つけ出す。太宰治の場合、落語の影響を受けたというのも、外枠だけでなく、落語のそういう普遍性を参考にしていたのかもしれません。
新宿の文壇バー「風紋」にて
『お伽草紙』の場合、外枠、型、側を活かしたまま、中身に自己流のものを通す。それを通すために、「カチカチ山」などの側を借りたといいますか。それにはどれが側でどれが中身でという本質がわかっていないと、使いこなせないでしょうね。そういうところをうまく、太宰はアレンジしているんじゃないですか。
この噺をこう進めていくという方法はあるんですが、こう言えばしっくりくるな、人間の実在感が出るな、という感触があって、それが昔のままで合わなければ変えることもある。
プロフィール
柳家三三(やなぎや・さんざ)……1974年、神奈川県生まれ。93年、柳家小三治に入門。2006年、真打昇進。09年、「花形演芸大賞・金賞」受賞。落語協会所属。
続きは、本書で
宋知恩さんインタビューをチョット紹介!

Q 「女生徒」はどうでしたか?
「思春期の女の子が持つ自意識の揺らぎと、陥りやすい厭世さが」……というようなことがインターネットに書いてありました(笑)。でも、厭世さというより、正直さ、じゃないかな。小説の中に、「嘘をつかない人なんてあるかしら」という箇所があって、読む大人たちは、そう思うのは思春期だからで、敏感だからなんだ、と思ってしまう。
太宰治は自分の生涯をモデルにして小説を書くこともあったと聞きますが、私も自分の作品に、そのときそのときの気持ちなどを表現しようとしていますが、大人になると、その正直さがなくなってきて、ウソつきになる。自分をいい子に見せたいし、人にお世辞を言ったり(笑)。それで自分の気持ちさえわからなくなってきて表現するのが難しくなってきたんです(笑)。
あっ! そうそう、最初にメガネの話が出てきます。「眼鏡をとって、遠くを見るのが好きだ。全体がかすんで、夢のように、覗き絵みたいに、すばらしい。汚ないものなんて、何も見えない。」この女の子は純粋だから、物事がきれいに見える。でも、大人になったら、「ああ、メガネがない! どこだ。どこだ」と、メガネだけを探してしまう。ぼんやり景色を見ようなんて思えない。
プロフィール
宋知恩(ソン・ジウン)……1984年、韓国ソウル生まれ。2007年、同徳女子大学美術学部卒業。09年、東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻入学。06年、ソウル市立美術大賞展入選。ダンウォン美術大展入選。07年、Kyung Hyong美術大展入選。09年、再興第94回院展、《真・嘘》で初入選。
続きは、本書で
出版体験学習レポート
9月10日の講義風景
本書は、弊社事業の「出版体験学習」の対象書籍。東京藝術大学の在学生の皆さんも参加してくれました。本書でもレポートを掲載していますが、皆さんの活躍は、本書において、存分に活かされています。
パブリック・ブレインの〈太宰治生誕100年記念出版〉宣言
太宰治の小説ほど、読まれた小説があっただろうか。太宰治の言葉ほど、私たちの 心を震わす力を持つ言葉があっただろうか。日本人ならば、人生の中で、必ず一度は読んだことのある太宰文学。その太宰がこの世に生を受け、2009年をもって100年となる。
パブリック・ブレインでは、これを機に、21世紀における太宰文学の真価を世に問いたい。かつて「青春のはしか」と揶揄された太宰文学だが、それは果たして本当だろうか。
小説「人間失格」は青春の暗愚、苦悩、自殺という一面だけで語られてしまう不幸な小説である。しかし、太宰文学の神髄は、卓越した時代性、普遍性、思想性にある。そして、何よりも、明るさの源がある。
混迷する現代社会、生きることに苦悩する現代社会、信頼できるものが希薄する現代社会。そういう時代だからこそ、太宰治を心の奥底に必携してほしい。本シリーズにより、その一端でも編集・出版というかたちで、顕在化できれば幸甚である。














