トークイベント

■『太宰は女である』発売記念トークショー第1弾 宇野亜喜良×オカダミカ

パブリック・ブレインの〈太宰治シリーズ〉第4弾『太宰は女である』の発売を記念して、東京・神保町にある東京堂書店神田本店で、トークショー&サイン会の第1弾が開催されました。

出演されたのは、イラストレーター界の重鎮・宇野亜喜良さんと、全国紙やファッション雑誌、文芸誌などを舞台に活躍される気鋭のイラストレーターのオカダミカさん。お二人には、本書で、「きりぎりす」(宇野さん)、「ヴィヨンの妻」(オカダさん)をモチーフに描き下ろし作品を制作していただき、インタビューもさせていただきました。

トークショーでは、太宰の話題はもちろん、制作のエピソードや新聞連載小説の挿絵秘話なども語っていただきました!

女性のがんばっている姿がかわいい!

オカダ(以下、O):本の中のインタビューで、宇野さんが電車でマスカラをつけている女の子が、かわいいと思うっておっしゃられていました。

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宇野亜喜良さん

宇野(以下、U):なんか共感するんですよね。

O:だいたい否定されますよね(笑)。でも、ステキだなと思います。

U:たぶん、「きりぎりす」に出てくる奥さんは、月並みなお化粧はするでしょうけど、ファッショナブルな女性ではない。だったら、金歯とか入れるのを否定しないと思います。それに、お化粧をしている女性を見ていると、なんだか見えるでしょ? その人が目指しているものみたいなものが。

O:その発想も女性的だと思うんですよ。その過程というか、できたところではなくて、そのがんばっているというところがかわいいとおっしゃっているのが、うれしいというか女として。

U:変われるんだったら、変われるというところがおもしろいなと思います。最近の若い男の子はそうだと思いますが、そうやって自分が変われるというのは快楽のひとつかな。でも、好きなタイプではなかったら不愉快に思うかもしれない。これは難しいことですね(笑)。

草食系男子は実在する? しない?

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オカダミカさん

O:私は比較的、草食系男子というのは信じていないんですが、ただ能力というか、男の特権みたいだったところが共有されてきてパワーバランスが変わってきたと思います。

U:オカダさんが行っていた青山塾だって、女性の方が多かったでしょ? 10年前ぐらいは男が2人ぐらいだったでしょ?

O:少なかったですね。

U:「デザインの現場」で女のアートディレクターというテーマであって、アートディレクターに女性が多いとなっていて、イラストレーターも女性が多い。僕も仕事を頼むとしたら、まずは老人ははずします(笑)。老人だとこちらから出向いたり、いろいろしなきゃならないし、そうなると若い人に頼む。それで、男と女だったらかわいい子を選んでしまいます。そう考えると自分自身も肩身が狭いのですが……(笑)。

O:最近の男の子は主夫になりたい人が多いみたいです。

U:わかる気がします。必ずしも料理だとかを嫌がっているわけじゃないと思います。つくることが好きな男性は多いですよね。太宰なんかは写真で見ると、むしろ草食系のビジュアルじゃないですか。太宰の場合は、女性性や時々出てくる道化、三枚目の要素があったり、でもシリアスな面もあり、複合して出てくるところが太宰のよさだと思います。

新聞小説の挿絵の醍醐味とは?

U:挿絵を描いているときは、男を描く方がおもしろいんですよ。女性よりもキャラクターに多様性があって描き応えがあります。

O:憧れの仕事でずっとやってみたいと思っていました。ただ、毎日の仕事をするということと、新聞という媒体も初めてだったということもあり、大変でした(笑)。

U:毎日原稿が来る?

O:原稿はすごく早くて、先にもらっていました。1ヶ月以上は先に。

U:1ヶ月分を1日で描いちゃえば、あとは遊んで……

O:そう思っていたんですが、そんなには描けませんでした(笑)。

U:まあ、そんなには描けないよね。僕の場合は、新聞のトップの裏側で最後に印刷されるので、1日前でも大丈夫だったんです。でもね、1日前でも作家が平気で文字を変えてくるんですよ。電話ですぐに直せるようにしていたんです。それだけ作家が真剣に取り組んでいるのはいいなと思って、ギリギリでも変更できるようにしています。

O:終わりを知らないで描くというのもおもしろかったです。

U:おもしろいよね。風俗を描いていて例えば、ショートヘアの女性を描いてて、そう思って描いてたら、3日後に「長い髪を掻き分けて……」と出てきて……

O:だから、私は長い髪で描いていました。もし、ショートヘアだったら、切ったことにすればいいと思って

U:なるほど。よく考えたね(笑)。

(2010年11月18日(木) 開催、 東京堂書店神田本店にて)

■『太宰は女である』発売記念トークショー第2弾 林静一×会田誠

パブリック・ブレインの〈太宰治シリーズ〉第4弾『太宰は女である』の発売を記念して、東京・神保町にある東京堂書店神田本店で、トークショー&サイン会の第2弾が開催されました。

出演されたのは、「昭和の竹久夢二」と称されるイラストレーター・林静一さんと、現代美術を牽引する画家・会田誠さん。お二人には、本書で、「葉桜と魔笛」(林さん)、「女生徒」(会田さん)をモチーフに描き下ろし作品を制作していただき、インタビューもさせていただきました。

トークショーでは、太宰文学を読んだきっかけが、共に三島由紀夫だったことを告白! 女性についての独特な見方など、内容は盛りだくさんでした。

実は、太宰治より三島由紀夫を……

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林静一さん

林(以下、H):私は三島由紀夫から太宰治に入りました。太宰はちょっと前の世代の作家だと感じていましたね。今の若い人と話をすると、戦前と戦後がつながっている。中野重治や芥川龍之介がどのへんにいるっていう、時間軸がなくなっちゃってて、みんな一つになっている。太宰治から内向の世代の古井由吉さんぐらいまでかな、ぴたっと一つになっている。
でも、その世代の文学はほの暗くて、主人公に緊迫感があって付き合っている女性に緊張感があるんです。物語が始まるときに、もうその緊張感が流れている。村上龍さんあたりからその緊張感がなくなっている気がしています。

会田(以下、A):中学のときには小田実とかが好きで、手塚治虫とかが僕の偶像。戦後の典型的な弱々しい父親への反抗もあり、僕も三島由紀夫に飛びつきました。高校時代は三島マニアでした。いや、マニアってわけでもないんですが(笑)。
美術家としての僕も芸術とかの概念を取り入れた最初は三島だったので、そこが僕の問題点な気も最近しているぐらい初期に影響をされました。三島はいい意味で官僚的なところがあって、日本の国に責任を持つみたいで。
すごい飛躍なんですけど、近代日本画の方が洋画よりも日本に、妙におせっかいなぐらい責任を持っているように感じます。それに比べると、洋画は基本的に自分のロマンティシズムで、おもしろおかしくってわけではないにしても個人主義的で、太宰はなんというか洋画系な気がしています。僕の中でも自分の洋画性と日本画性に揺れているところがあります。
太宰文学は、三島読者だった僕には、びっくりするようなスムーズな文体に反発しながら、読んでました。何か太宰に近づかないのは同族嫌悪なのかもしれません。

女性はロジックではなく感覚を好む!

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会田誠さん(中央)

A:女性を描くんですけれど、僕の女性は問題がありますね(笑)。ほとんど記号、内面のない女性なんです。最近つくづくわかってきてるんですけどね(笑)。
今回、「女生徒」をモチーフに絵を描くとき、ノーマン・ロックウェルのイラストのブスな女の子や、ちょっと変わった表情をしている男の子なんかの個性的な内面が表情に表れているような女の子を描こうと思ったんです。ギャラリーのスタッフの女性にモデルになってもらって、変な顔をいっぱいしてもらったんです。
でも、どうも描き始めてみても、へんてこ表情がうまく描けず、結局C級アイドルがおすまししているような顔に落ちついてしまって……。絵でさえ、女性の内面を表現できないのか、と。
それでいうと、林さんは日本文学のある濃密な男女の、酸いも甘いもある修羅場みたいなものを描かれていますよね。「ph4.5グッピーは死なない」とかも含め、今日はそういう話が伺いたいなぁと思ってました。

H:女性の気持ちを代弁して何か描いている自負なんて、ほとんどないですよ(笑)。でも、太宰が洋画だというのはすごくわかります。女言葉のしゃべり方を模写するっていうかな、僕は「葉桜と魔笛」というのはちょっと不本意なんですよ。描くなら本当は、「女の決闘」がよかった(笑)。あれはものすごくうまくできています。出典が何の外国の小説なのか曖昧にしていて、ずーっとその小説があるような、ああ、これはうまい手だなと、物語をつくる上で。
会田さんが本の中のインタビューで言っていたけれど、スイーツのような文体ね(笑)、その巧さがある。

A:女性のファンが多いですよね、太宰は。僕も変態で女の子に嫌われるような作品も作るんですけど、それにもかかわらず女性のファンが多いかもしれなくて。なんでかというと、僕の作品はロジカルじゃないんでしょうね。ロジックより感覚でやっていて。あるときから、多少女性ファンを想定して作っているところもあって……。

H:ああ! そう!?

A:林さんもそういうタイプではありませんか?

H:いやいやいや(笑)。

A:すっごく大雑把に言ってしまえば、失礼かもしれませんが、太宰治、林静一さん、よく引き合いに出される竹久夢二、あと、村上龍の若い頃とか、他にもいるかもしれませんが、なんだか似た匂いがしています。女性ファンが多い(笑)。私生活上も女性にモテるのでは? そういう人たちには独特の勘のよさというか、ロジック以外の勘のよさが表現に表れているような気がしますね。

(2010年11月26日(金) 開催、 東京堂書店神田本店にて)

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