今、はな子が笑った! 井の頭自然文化園で暮らしたゾウの物語画集
高尾ふき子 著・絵/978-4905295617/48ページ/絵本/2,200円(税別)/2020年9月刊
戦後、はじめて日本に来たゾウのはな子は、貧しく娯楽の少ない子供たちを励ますため、タイの王さまから日本に贈られた。そのはな子の一生を、銅版画家の著者が心和む色彩銅版画やパステルなどを駆使して描き、実話に添って絵本を作った。
2009年春、井の頭自然文化園のゾウのはな子と出会った著者はその日偶然に、はな子の笑顔に出くわす。「ゾウも笑うのか!人間と同じような感性を持っているのかも」。衝撃を受け、はな子からインスピレーションを授かり、はな子を銅版画で表し始めた。老ゾウのいぶし銀のような存在感に強烈に魅せられ、2016年、はな子が星になるまで7年間も銅版画ではな子を制作し続けた。
その後、はな子の生涯を描いた物語画集を作ることを思い立ち、3年かけて完成。制作の途中、はな子を直接飼育していた飼育員さんへの取材から得た貴重な話も内容に添えた。後半には、代表作である大型銅版画作品の紹介も……。
長年ゾウの仲間がいない環境で過ごしたゾウのはな子に、哀悼の意と敬意と感謝をこめて贈りたいと思う。